Close

成果を製品作業の指針にする

予定どおりに予算内で機能をリリースすることは重要です。ただし、これらの機能が顧客とビジネスに実際に価値をもたらす場合に限ります。だからこそ、製品チームには、製品を改善し、ひいては組織に利益をもたらすような大局的な成果を中心に作業を進めることをお勧めします。

成果 vs アウトプット

予定どおりに機能をリリースすることはアウトプットであり、チームが達成することで合意した特定のタスクです。価値を提供することは成果であり、たとえば、サポート チケットを削減することで、ユーザー エクスペリエンスの向上が証明されます。

アウトプットの例

成果の例

特定の日付までに 10 個の機能をリリースします。

成果の例

トライアルから有料へのコンバージョンを、15% から 25% に増やします。

長い形式のコンテンツ資産を、四半期ごとに 3 つ公開します。

成果の例

ある機能のサポート チケットを、50 件/週から 5 件/週に減らします。

特定の会議に間に合うように製品を発売します。

成果の例

X 人の顧客が特定の問題をソリューションによって解決したことを証明します。

アウトプットを過度に重視してしまいがちです。というのも、アウトプットは作業を成し遂げるメカニズムであるためです。しかし、実際には、生産性や成功を測定する最良の方法ではありません。

成果よりもアウトプットを重視すると、チームは、イニシアチブの背後にある大局的な目的を見失ってしまう可能性があります。製品がユーザーのニーズを満たしていないという重要なシグナルを見逃す可能性があります (評価者がアクティブ ユーザーに転換しない、企業が信頼性の問題で解約するなど)。

「成果 vs アウトプット」をめぐる議論は、つまるところ「質 vs 量」の議論です。製品チームはできるだけ多くの機能をリリースすることを目指しているのではありません。製品チームの目標は、ユーザーの問題をできるだけ容易に解決するツールを作ることです。

だからこそ、製品チームの成功は、期日どおりに予算内で機能をリリースすることではなく、顧客やビジネスにもたらした実際の価値に基づいて評価されるべきなのです。

望ましい目標や成果に基づいて計画や議論を構築することで、チームは日々の業務にではなく、働く理由などの価値の実現に沿って働くことができるようになります。

このアプローチは、以下のように、チームのカルチャー、士気、生産性に多くのメリットをもたらします。

  • 明確なミッションと目的: チームは、目標への貢献度に基づいてすべてのイニシアチブを評価します。最も大きな影響を与えうるイニシアチブが明確になるため、優先順位付けが容易になります。
  • チームの強化: タスクではなく、成果のために取り組むことで、チームは新しいことを試して、学んだことに基づいて適応し、目標達成のために必要なことは何でも実行できるようになります。このアプローチは、実行力とチームの士気において優れており、チームはすばやく前進し、より大きな影響をもたらし、自分たちの仕事に誇りを持つことができます。
  • 継続的な改善のカルチャー: 成果に責任を持つことで、チームは向上を促されます。進捗を測定し、学んだことに基づいて適応することで、働き方を継続的に改善していきます。

成果重視のアプローチを実践するには、いくつかの重要なステップが必要

1. ビジネスの成果と製品の成果を明確に定義する

まず、望ましい成果を明確に定義します。「Specific (具体的)」で「Measurable (測定可能)」かつ「Achievable (達成可能)」で、「Relevant 関連性のある)」「Time-bound (期限が明確)」(SMART) なものにします。

『Continuous Discovery Habits』によると、成果には大きく分けてビジネスの成果と製品の成果の 2 種類があります。

  • ビジネスの成果は組織にメリットをもたらします。これは遅行指標であり、製品に関する決定や成果によってすでに何が起こったかを示しています。
    • 収益に変化が見られた場合、それはチームが一定期間にわたって数々の変更に取り組んだことの最終結果です。それが、たった 1 つのイニシアチブによるものであることはめったにありません。
    • 例: 収益の向上
  • 製品の成果は、ポジティブなビジネス成果を生み出すための製品の改善です。これは先行指標であり、ビジネス成果に何が起こるかを示す初期の兆候です。
    • 製品の成果により、チームは自分たちの決定が顧客行動に与える影響を反復サイクルの中で測定できます。こうした決定が、最終的に業績に影響を与えます。
    • 例: 評価から購入へのコンバージョン率の向上
ビジネスの成果が製品の成果と機会にどのようにつながっているか

アトラシアンでは、目標と主な成果 (OKR) のフレームワークを使って成果を定義し、測定しています。OKR の活用方法について詳しくは、Atlassian Team Playbook をご覧ください。

2. 成果を中心にチームの足並みを揃える

目標が明確になったら、それをすべてのチームに伝えます。人々は目標そのものだけでなく、日々の業務が実際にどのようにして目標の達成に結びつくかを理解する必要があります。

会社全体で、組織の成果につながるチーム目標を設定します (その方法については以下に説明します)。もちろん、組織の他のチームがまだ取り組んでいなくても、個々のチームがアウトプットよりも成果に重点を置き始めることもできます。

優先順位付けを行うときは、望ましい成果を中心に話し合いを行います。「X のリリースはいつか?」というタイプの話し合いから脱却して、代わりに、洞察に基づき、影響に焦点を当てた製品ロードマップを目指します。

成果重視のロードマップ
アウトプット重視のロードマップ

3. 反復して結果を出す

このアプローチにおいて、特定の機能を提供することは、目標を達成することほど重要ではなくなります。チームは、うまくいかないものと、うまくいくものを試します。容易に、そしてすばやく失敗できる環境を作ることで、チームは、実験を試みる心理的安全性を得られます。

計画を立てる際は、自分たちの仕事がどのようにして望ましい成果を導き出すのかを仮定し、それが正しかったかどうかをテストするようチームに促します。このアプローチにより実験的な考え方が促進され、チームは改善と仮定の検証を反復し続けます。

成功と進捗は以下の 2 つの方法で測定できます。

  1. 定性的な指標 (例: ユーザー フィードバック)
  2. 定量的な指標 (例: コンバージョン率)

これらの指標を中心としてレビューの話し合いを行い、こうしたデータに基づいて反復の仕方を決めます。


オポチュニティ ソリューション ツリー

Teresa Torres によって広められたオポチュニティ ソリューション ツリー (OST) は、ビジネスの成果と製品の成果、およびそれらを達成するために活用できる機会、ソリューション、実験を視覚化する方法です。

OST は、特定のソリューションを追求している理由、定義された成果に対して想定される影響、および反復すべきその他の潜在的なアイデアやソリューションをチームが把握するための優れた方法です。

オポチュニティ ソリューション ツリー

この OST は Confluence ホワイトボードを使って作成したものですが、Jira Product Discovery でも、わずかな設定により簡単に作成できます。

以下に紹介している内容:

  • Jira Product Discovery でソリューションを機会別にグループ化する方法のデモ
  • この設定を再現する方法のチュートリアル

デモ: ソリューションを機会別にグループ化する

JPD でこの設定を再現する方法のチュートリアル


Jira Product Discovery チームが VMGS フレームワークを活用して、成果を中心にチームをまとめた方法

Jira Product Discovery の構築時、アトラシアン チームは成果主導型の働き方を大いに活用していました。戦略的な成果を重視して作業し続けるために、「Vision (ビジョン)」「Mission (ミッション)」「Goals (目標)」「Strategies (戦略)」(VMGS) のフレームワークを用いていたのです。

成果重視のアプローチは、製品戦略だけでなく、製品チームの仕事のほぼすべての側面にメリットをもたらします。このセクションでは、Jira Product Discovery 構築時の戦略を例として紹介し、成果が、どのように製品に関わる仕事の指針となるのかを示します。

VMGS: ビジョン、ミッション、目標、戦略

成功につながる明確な道筋をチーム全体で思い描き、共有していていれば、ロードマップの優先順位付けはかなり簡単になります。目指している最終的な成果や、そこにたどり着くために反復する戦略についての曖昧さはなくなります。

その道筋を定義するために、アトラシアン チームはビジョン、ミッション、目標、戦略 (VMGS) のワンページャーを作成しました。

このドキュメントは、なぜ、そして誰のために Jira Product Discovery を製品として開発するのか、それがビジネスとしてアトラシアンにどのようなメリットをもたらすのかを話し合う一連のワークショップで協力して作成したものです。

VMGS の強力なワンページャーによって、誰もがメンバー同士のつながりや、日々の業務やプロジェクトの最終目標に対するつながりを感じられるようになります。過度に説明的にせず、明確でシンプルなものにし、派手な言葉や業界用語を使わないようにしましょう。

ビジョン、ミッション、目標、戦略

Jira Product Discovery チームの VMGS ワンページャー

ビジョン

ビジョン ステートメントでは、未来の理想的な最終状態を説明します。プロジェクトが成功したと仮定し、プロジェクトが完了した際の世界がどのようになっているかを示します。

Jira Product Discovery 構築時の私たちのビジョンは「戦略的成果を重視した製品チーム」でした。私たちは、最も成功している企業が製品モデルを採用している世界を構築したかったのです。

ミッション

ミッション ステートメントには、ビジョンがどのように実現されるかについてのチーム独自の視点が記載されます。

Jira Product Discovery チームのミッションは「製品チームの可能性を解き放って影響をもたらす」ことです。これは、「すべてのチームの可能性を解き放つ」、つまり個々のチームに力を与えることで組織を強化するというアトラシアンのミッションを具体化したものです。Jira Product Discovery のミッションは製品チームに焦点を当て、チームがアウトプットだけでなく仕事の影響に注力できるように支援することを具体的に述べています。

目標

目標は、取り組み全体の成功を測るのに役立ちます。測定可能なものとし、期限を設ける必要があります。

Jira Product Discovery の目標は、アトラシアンの基準において成功を収めたビジネスになることです。「揺るぎない指標」として、私たちは特定の年の収益目標という具体的なビジネス成果を選択しました。毎月、その指標の進捗状況をアトラシアンの他のメンバーに報告しています。このような単一の目標を持つことは、戦略が目標の達成にどれだけ有効かに基づいて、戦略を適応させたり変更したりするのに役立ちます。

戦略

戦略とは、それがミッションの遂行と目標の達成を促進するという確信のもと、時間とリソースを投資する具体的な方法です。明確かつ明快で、理解しやすい、実用的な戦略が最も効果を発揮します。

戦略ごとに、その成功を測定するためのサブ目標があります。サブ目標は通常、SEQ スコア (シングル イーズ クエスチョン: 知覚されたユーザビリティの評価尺度) や海賊指標 (AARRR: 獲得、活性化、維持、紹介、収益化) など、特定の指標を質的または量的に改善しようとするものです。

JPD チームにおいて、戦略がどのように成果につながっているか

緑: ビジネスの成果。濃い青: 戦略とそれに対応する製品の成果。水色: 特定の指標で測定される、対応するソリューション。

目標、戦略、指標の一例を詳しく見てみましょう。

Jira Product Discovery チームにおいて、具体的な取り組みが戦略にどのようにつながっているか

目標: 2026 年までに $X ARR

戦略: GTM (収益で測定)

製品の成果: GTM チームを有効化 (年間プランからの収益で測定)

ほとんどの顧客は Jira Product Discovery をセルフサービスで購入しますが、規模の大きな顧客はアトラシアンのアカウント エグゼクティブまたはパートナーを通じて、通常は年間プランで購入します。この戦略の成功は、年間プランの顧客からの収益に基づいて評価されます。

ソリューション: 「慣行と製品管理の作業方法を広めます」

評価者から、製品モデルの操作方法や、そのモデルでの Jira Product Discovery の使用方法についての認識不足に悩まされているというフィードバックを数多く受けました。これは、評価者が製品を導入することを妨げる問題点です。

この戦術の一環として、このハンドブックを作成しています。導入率が高まっているどうかを把握するために、数多くの顧客を対象にテストを実施して成功を測定します。成功すれば、この戦術と戦略への投資を拡大する予定です。

目的の追跡

Atlas での目的として、目的とサブ目的 (戦略ごとに 1 つずつ) を作成し、Atlas を使用して、各目的の進捗を企業の他のメンバーに毎月レポートします。

注意: Atlas はアトラシアン プラットフォームに移行し、無料でご利用いただけるようになります
目的のためのプラットフォーム機能は、現在アーリー アクセスで利用可能で、ここで使用することもできます。Atlas を使用するか、プラットフォーム機能を使用するかにかかわらず、この機能をオンにすることで、Jira Product Discovery プロジェクトで目的を使用できます。そのためには、こちらの手順に従ってください。


VMGS のアップデート

時間が経つにつれて、製品とその目的の理解は、私たちが継続的に学習する内容に基づいて深まります。そのため、3 から 6 か月ごとに、チームとしてコラボレーションして VMGS をレビューします。

チームの目的が登山である場合、目標は山頂に到達すること (またはベース キャンプに戻ること) であると全員が明確に認識することが重要です。また、そこに到達するためにさまざまなグループが探求している道を理解することも必要です。行き止まりにつながる道もあれば、山頂に早く到達する道もあるでしょう。定期的にチェックポイントを設けることで、利用可能なオプションをレビューしたり、次のステップを選択したりするのに役立ちます。

これまでのところ、Jira Product Discovery の構築中に、次のことがわかりました。

  • ビジョンとミッションは過去 3 年間安定しています。
  • 仮定と実際の成長データの両方で構成される財務モデルに基づいて、四半期ごとに目的をレビューします。
  • 戦略は過去 1 年間安定していますが、それを達成するための戦術は、3 から 6 か月ごとに変化します。

どの時点においても、私たちは戦略のサブセットを積極的に追求しているにすぎません。チーム全体が、「イエス」の内容と「ノー」の内容を明確に認識することは、そのどちらも、優先順位を明確に話し合うために重要です。

Jira Product Discovery チームの初期戦略

これは、製品の初期段階のスナップショットです。この時点では、灰色の戦術は積極的に行われていませんでした。


次にすべきことは何でしょうか?

このハンドブックの後半では、製品バックログを次の目的で使用する方法について詳しく説明します。

Jira Product Discovery やその他の製品を使用して、Jira Product Discovery チームでこれを行う方法の例を示します。

また、エンドツーエンドの例としてこのデモを視聴することもできます。

概要

このハンドブックの作成理由、およびハンドブックがどのように役立つかについて詳細をご覧ください。

プロダクト バックログ

製品バックログを効果的に管理して、アイデアに優先順位を付け、コラボレーションを強化し、製品開発を促進する方法をご覧ください。